GMBAのO(Class of 2024・ゼネコンからの社費留学)です。
今回は私がElectiveのなかでも特に気に入ったPower of Prestigeという、ビジネスにおける企業や個人のステータス(社会的地位)やレピュテーション(名声)を扱うストラテジーの授業を紹介したいと思います。
この授業は社会学(デュルケムやM・ヴェーバー)や生物学(霊長類研究)を引用しながら、ステータスやレピュテーションが人間や社会にとって何を意味し、人間の社会的営みの一つであるビジネスに、どのように作用しているかを学ぶ授業です。具体的には、企業や個人がなぜステータスやレピュテーションを気にする(べき)か、それらが実際にどのように企業やビジネスパーソンの成功や失敗に影響しているかを、ケースの事例を取り上げながら学びました。
教授いわく、人間がステータスやレピュテーションを気にしたり、それらが並べられたランキングが大好きなのは、生物としての生存戦略に叶った行動で、これは霊長類の研究・実験からも裏付けられているとのことです。つまり、高いステータスやレピュテーションを有する企業や人は、過去に素晴らしいパフォーマンスを出したからその地位や名声に預かっていると考えるのが自然であり、情報がない中で自分が生き残るために良い取引をしようと思えば、高いステータスとレピュテーションを有する企業や人を選ぶのは生存戦略上妥当であるという考え方がその裏にあるということです。
このステータスとレピュテーションをめぐって、授業で扱ったテーマとケースは以下の通りです。
テーマとケース |
テーマ:「ステータスやレピュテーションの源泉は何か?」ケース: ヒエラルキーのトップに君臨しつづけるマッキンゼーの成功 |
テーマ:「ステータスやレピュテーションが個人にとってどのような影響を与えるのか?」ケース: 成功に自惚れて失敗したマッキンゼー取締役グプタ(インサイダー取引事件)と タイコCEOコズロフスキー(業務上横領事件) |
テーマ: 「ステータスやレピュテーションが企業にとってどのような影響を与えるのか?」ケース: ネットワーク(人脈)効果を使ってレピュテーションを高め、ステータスを築き成功したベンチャーキャピタルa16zと高級服飾ブランド ココ・シャネル |
テーマ:「レピュテーションマネジメント。どのように失った信用を取り戻すのか?」ケース: 乗客を暴力的に引き摺り下ろしてネット炎上したユナイテッド航空とその謝罪対応 |
テーマ:「インターネットやSNSがステータスとレピュテーションに与える影響」ケース: インフルエンサーとSNSを活用してファンを巻き込むことにより成功したBTS(K-Pop) |
テーマ:「スーパースターエフェクトと勝者総取り社会」ケース: OpenAIとグーグルとメタとアマゾンによる生成AIビジネスをめぐる戦い。 |
以上です。
個人的にはどれもおもしろいテーマとケースでした。
そして、この授業の興味深い点は、他のビジネススクールの授業と比較して、社会学や文化人類学といったより大きな視点と切り口からビジネスを研究している点です。たとえば、「ブランドとは何か?」と聞かれて、マーケティング的な回答をするならば”ブランドとは他者にシグナルを送る記号である”という回答で十分だと思います。しかし、この授業ではもう一歩踏み込んで、「そのブランドの力が有効なのは、人間はステータスを気にしてしまう社会的動物であり、それは生物の生存戦略として深く組み込まれており、企業の業績や個人のキャリアに作用しているからである」というより深い洞察を提供してくれる授業でした。