ミシガン大学MBA日本人ブログ

ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネス在校生、卒業生の日頃の生活や学習内容などを紹介していきたいと思います。

【LBLE】アナーバーの医療スタートアップ

こんにちわ!FTMBA Class of 2019のShinです。

RossにはMAP以外にもハンズオンのプログラムがたくさんあります。授業中にシミュレーションするものから、実際にお金を使ってファンドを運営するもの、実在する企業と経営課題に取り組むものまで様々。
※これらのプログラムはRoss Experiences in Action-Based Learning — REALというコンセプトで統一されています。

 

今回は、そんなハンズオンの一つ、LBLEについてご紹介します。

 

実在する企業の経営課題に取り組むプログラムの代表格はもちろんMAPですが、もう一つRossが力を入れているのがLBLE Living Business Leadership Experience | Michigan Rossです。LBLEでは1学期(4ヶ月)通して企業の経営課題に取り組みます。

MAPとの違いは、事前に選考プロセスがあること(参加は2年生のみ)、MBAだけでなくBBAや他学部の学生も参加すること、フルタイムではない(他の授業もある)こと、それからプランの策定がメインのMAPよりも実行に軸足を置いた内容であることです。
LBLEのスポンサーは大手自動車メーカーや不動産会社、スタートアップ、ブランドメーカーなど。Rossは今後プログラムを拡大し、スポンサーも増やしていく予定だとか。

 

僕は他の8人のメンバーと一緒に、Warmiluというアナーバーの医療スタートアップに携わることになりました。CEOはミシガン大の工学部出身。材料工学を専攻した彼女は、Phase Change Material(相変化物質)と言われる物質を応用して、人体を暖められる適温で長時間発熱し続ける、しかも100回以上再利用可能なジェルパックを開発しました。特許とFDAの承認も取得済みです。このパックは熱を吸収するアイスノンの逆バージョン。要は熱のバッテリーです。

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WarmiluのInstaWarmerとIncuBlanket

 Warmiluはこの発熱パックを使って、低体温症になりやすい新生児を救うことを会社のミッションにしています。CEOは、彼女自身が未熟児として生まれ医療に命を救われたことから、生命の危機にある小さい命を守ることを使命に感じているパワフルな女性です。 

これまで大学が支援するビジネスコンペで選ばれたり、ベンチャーキャピタルから出資を受けたりしながら開発・生産し、UNICEFや国境なき医師団をはじめとする基金や医療組織を通してアフリカや南アジアなどの海外のマーケットに展開してきました。

 

今期のLBLEは、前期のチームの引継ぎから始まります。昨年時点で、セールスの観点では海外で軌道に乗り始めていた一方、間に複数のグループが介在する海外との取引に起因するキャッシュフローの悪化に苦しんでいました。そこで、足元のアメリカ市場に目を向けて新商品を投入し、安定した売上げ&キャッシュフローを生み出すことを目指したのが前学期。前チームはUS国内のポテンシャルのある業界のリサーチを行って、寒い中で外に長時間いるフィッシャー&ハンターの市場に可能性があると特定しました。

では、どんな製品をどういうアプローチで投入すべきか、そして如何にコストを抑え効率の良い生産を行えるか、というのが今期のお題です。

今期のチームは、新商品の製品デザインを担当するマーケティングチームと、生産とコストを担当するオペレーションチームに分かれました。僕はオペレーションチームです。当初は両チームとも新商品に関わる予定だったのですが、新商品が何かわからない段階で生産の話はできないので、その間オペレーションチームは既存の商品に焦点を当てることに。

LBLEが始まる前はウェブサイトの印象だけだったのが、CEOと話し、生産現場を訪れ、会社の背景を知っていくうちにリアルなビジネスの実態が見えてきます。ビジネスに対する理解を深めながら、現状のコストを分析し、何がコスト要因で対策は何が考えられるか、そしてそれを選定・実施するための情報収集、といった活動を行っています。

 

LBLEの面白さの一つは、MBAでの学びをリアル・ビジネスで活かせることです。ストラテジーやマーケティングの授業は市場でのポジショニングの理解に役立ったし、アカウンティングはコスト分析に、それから知的財産法の授業はWarmiluの特許を理解するのに役立ちました。クラスの学びを実践している感覚はハンズオンの醍醐味ですね。

逆に、LBLEのプロジェクトを進める上で難しいのは、不確実さへの対処だと感じています。(LBLEのプログラムオフィスも「Amiguity」への対応をテーマにしています)
情報やリソースの制約があるだけでなく、その中で自分達が何をゴールにして何をやるかを考えなければいけません。

スタートアップの環境は制限が多いのは事実ですが、一方でスタートアップならではの良さもあります。まず、組織が小さく全体を見渡せること。CEOとの距離が近く、アクションを起こせば展開が早いこと。そして、自分達のプロジェクトが与えられる影響が大きく、当事者意識を感じます。


残り半分、より魅力的なビジネスになるようプロジェクトを進めていきます。

以上、LBLEの紹介でした!