●序文・自己紹介
こんにちは。GMBA Class of 2021のTSです。ジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領に就任、歴史的な日をアメリカで迎えることができました。しかし、この時期は日中も0度を上回ることは少なく(夜は氷点下10度位)、毎日雪がしんしんと降る中、ずいぶん遠い地に来てしまった、と雪国ミシガンを実感する日々を過ごしています。
そんな私は、公認会計士として会計監査からキャリアをはじめ、M&Aアドバイザリー業務などに従事した後、ミシガン大学ロスビジネススクールに入学しました。ロスでは、アカウンティングやファイナンスの知識の棚卸に加えて、新たにストラテジーやデータ・アナリティクスなどの分野に挑戦しています。
本ブログ執筆時点ではWinter Aが始まっています。今年のGMBA生はCOVID-19の影響からFTMBA生と合同で授業を受けていますが、現在は、ACC 552 Managerial AccountingやTO 552 Operations Managementのコアに加えて、3科目のエレクティブを受講中です。
さて、今日のお題はグループワークです。
●グループワークについて
ビジネススクールでは、経営全般に関する科目が網羅的に提供されているものの、知識の獲得については、本やウェブ、動画で獲得できることも事実です。わざわざ貴重な時間と多額のお金を投資してまで、ビジネススクールで学ぶ必要性があるのか?という疑問を抱く読者も多いかと思います。
そこで、本日は本やウェブ、動画を通じては経験することのできない、ビジネススクールならではのグループワークについて紹介させていただきます。ロスは、MAPが有名ですが、全ての授業においてグループワークを取り入れていることで定評があるビジネススクールでもありますので、留学生活をより具体的にイメージしたいという読者の方に参考になれば幸いです。
(補足)アメリカの国立訓練研究所(National Training Laboratories)のThe Learning Pyramidよれば、学びの定着には実践が必要とされていますが、ビジネススクールでは、学びを最大化するために、授業への参加だけでなく、グループワークによる課題への取り組みを通じて、新しい知識の獲得と定着ができるようにデザインされています。
・グループワークの進め方(コア科目を例に)
コア科目のグループワークで取り組む課題には、ざっくり2パターンがあり、各授業によって回数と成績評価の比重が異なります。(学期終盤には、メンバーの関与度合いを申告するPeer Reviewという制度があるので気を抜くことができません。)
(コア科目におけるグループワークの回数と成績評価の比重)
今回は、各授業でグループワークがどのように行われているか、実際のケース例を紹介させていただきます。なお、チーム編成としては3名~6名程度が一般的です。エレクティブになれば自分でチーム編成ができることもありますが、コアでは教授が各グループに割り当てることが殆どです。(教授がグループを決める理由は、学生各自のこれまでのキャリアなどの特徴をあらかじめ知った上で、様々な特徴を持つ学生を同グループにいれることで学びの機会を広げることが目的だそうです。)
なお、ロスの名物であるMAPやエレクティブのAction Learningなどでは、実際の企業からプロジェクトを受注したり、ビジネスプランをゼロから練り上げたりなど、長編の成果物を学期末に提出することが求められます。このようなプロジェクトではより実践の度合いが高まり、取り組む期間も数週間から場合によっては学期を通してになります。(こちらに関しては他に多くのブログ執筆があると思いますので、そちらをご参照下さい。)
1. ケースライトアップをグループで取り組む
STRAT502 Corporate Strategy, MKT503 Marketing ManagementやMO 503 Leading people and organizationなどの授業ではケースライトアップ(場合によりプレゼン含む)が求められます。指定のケーススタディー等をグループ全員で分析し、チームで議論しながら成果物にまとめ上げて提出します。
例えば、STRAT502 Corporate Strategyだと、
・合計3回のグループ課題(6名)で、成績評価の比重は全体の30%
・提出方法は、10P以内のスライドに纏めて、10分間プレゼンする形式
・課題1は、IM等の限られた情報に基づいて、ベンチャーキャピタルとして、宇宙系新興企業に対する投資判断の是非を決める
・最終課題は、HBSのケースを読んで、その企業に雇われたコンサルティングチームとして、その企業に対する課題解決の提案を行う
基本的には授業で学習したフレームワークを使いながら課題解決を探りますが、「正解がない科目」のため、自分の考えを述べ、ネイティブと議論をしながら、それらを組み合わせてチームでより良い結論にたどりつくことが求められます。しかし、私の場合、ネイティブの圧倒的なスピードの議論の流れに乗りながら適切な発言を繰り返すことは容易ではありませんでした。結果として、優秀で寛容なチームメンバー達に囲まれて、最後は最優秀プレゼン賞を頂くことができましたが、基本的にはネイティブの議論した内容沿って、自分の意見を付け足す、スライドを美しく見せるという程度に終始してしまいました。他の日本人の方にヒアリングしても同様の意見が多かったですが、それぞれ、①事前にプレゼンのスケルトンを用意し議論の流れを創り出す、②成果物をより高度化するなどで善戦しているケースが多かったようです。
(プレゼン資料の一部抜粋)
2. 練習問題をグループで取り組む
数学的要素が多い授業(FIN 503: Financial Management, ACC 502: Principal of Finance Accounting, BE 502: Applied Microeconomics, TO 502: Applied Business Statistics)については、個人提出課題とは別に、グループ提出課題も出題されます。特に、グループ提出課題は、授業で学習した内容よりもやや難しく設定されていることが多く、バックグラウンドのあるメンバーを中心としながら知恵をひねり出していくケースが求められることがありました。
例えば、FIN503 Financial Managementだと、
・合計3回のグループ課題(毎回異なるグループ)で、成績評価の比重は全体の20%
・毎回5問程度の大問で構成され、対応するエクセルファイルを教授に提出
進め方はグループ次第ですが、私のグループでは、各自が全ての問題に取り組み、解答が相違した部分についてミーティングで解決する方式を採用しました。私の場合は、これらの授業は比較的得意であったため、ミーティングでも議論をリードできる場面が多かったです。(数字に強くないネイティブが意外にも多く、彼らの疑問点を理解して納得するまで伝えるというプロセスは骨が折れましたが、The Learning Pyramidにもある通り、教えることで学習の効果を最大化できたと思います。)他の日本人学生も同様の意見が多く、語学ではネイティブに敵わない日本人でも議論をリードできる場面のひとつだと思います。
(エクセルシートの例)
●グループワークのテイクアウェイ
これまでグループワークの例を紹介させていただきましたが、筆者自身、成果物の提出に貢献できたと感じる課題もあれば、正直全然貢献できなかったと感じることもありました。(特にマーケティングや組織論など「正解のがない科目」は、ネイティブにおんぶにだっこ状態の場合も多々ありました。)この点、ロスは非常にコラボレーティブな学生が多いことでも有名ですので、彼らの献身的なサポートを受けながら、マイノリティの環境下でのバリューを発揮するための環境は整っていると思います。何よりも、考えている内容はクラスメイトと遜色ないのだから、恥ずかしさを捨てて発言するなど度胸が何よりも大切だとクラスメイトから教わりました。(意見を言えば、必ず真摯に耳を傾けてくれる最高のメンバーばかりです。)
また、むしろこちらの考え方の方が重要だと思うのですが、多様性に富んだチームメンバーの能力をお互いに最大限活かそうとする価値観を醸成できる環境ことが、何よりもロスで学ぶ大切さだと気付くことができました。ビジネススクールの学生は、様々なバックグラウンドの人がいるため、個人によって知識や実務経験のバラツキがあります。その環境下において、それぞれ自らの得意分野や弱点を素直に開示し・理解しあった上で、グループワークを進めていくというのは、各自がリーダーシップを発揮する上でも非常に効果的だと感じています。(しかも、こういった経験をグローバル環境下において実践できる機会は貴重な体験だと感じています。)
結果として、今ではグループワークがあるからこそ、ビジネススクールでの学びが最大化されると思うように至りました。
・最後に
今回は、グループワークについての記事でしたが参考になりましたでしょうか。
ロスがコンサルティングファームなどのリクルーターから評価が高いのは、数多くのグループワークを通じてチームワークへの造詣が深めながら、プロフェッショナルファームでの働き方に似た経験を積める機会に恵まれていることも重要な要素のひとつだと思います。ロスでは、チームワークを重視する多国籍の同級生から継続的な刺激を受け、更なる成長の糧になる機会に溢れています。是非、本校に興味を持っていただけますと幸いです。