ミシガン大学MBA日本人ブログ

ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネス在校生、卒業生の日頃の生活や学習内容などを紹介していきたいと思います。

海外MAP体験談 @India E-Commerce

こんにちは!もうすぐMBA2になるFTMBA 2024のAです。RossのAction Learningの目玉であるMAP(Multudisciplinary Action Project)について、Sが米国Techの体験談(MAP体験談 Product Strategy @US Tech - ミシガン大学MBA日本人ブログ)を執筆していましたので、私からは海外プロジェクトの体験を共有したいと思います!

 

今年はCOVIDで長らく中断していた海外プロジェクトが本格的に戻ってきた初年度で、MAPの約100のプロジェクトのうち、海外が3-4割程度を占めており、ヨーロッパでの気候変動対応からアフリカでの経済発展支援まで幅広いトピックで、国別ではイスラエルやインドのものがやや多かったと記憶しています(この辺りはMAPスポンサー次第のため、毎年変動する点はご留意ください)。

 

私が取り組んだのは、インド政府主導の革新的なEコマースモデルを推進するONDC | Open Network for Digital Commerceという政府直下のNon-profitのプロジェクトです。従来のプラットフォームがマーケットパワーを有する状況を打開するために、プラットフォームの壁を越えて情報をやり取りするプロトコルを新たなネットワークモデルにおいて、参加者間の信頼を担保する戦略を検討する、という内容でした(プロジェクトの詳細は割愛します)。総じて非常に良い体験でしたが、特に以下5点についてお話します。

① 海外プロジェクトにおける現地滞在

② 海外企業・組織での実務

③ チーム・プロジェクトマネジメント

④ 学校のリソース

⑤ 留意すべき点

 

① 海外プロジェクトにおける現地訪問

海外MAPの一番の魅力は、なんといっても実際に現地に滞在できることです。私はインドのデリーに4週間滞在したのですが、現地滞在は大抵のものが1-2週間、長いもので3-4週間になり、私のプロジェクトは最も長い海外滞在期間のものでした。

MAPの現地訪問では、航空券や滞在費はもちろん、食費などをカバーするための日当も支給されるので、基本的な部分についてコスト負担も発生しません。但し、駐在や出張の方が滞在するような地域・ホテルではなく、ローカルな人も宿泊するような平均的なホテルになります(衛生面や安全性は担保される前提です)。私の場合、学校が最初に予約していたホテルでお湯が出なかったり停電があったりしたため、自分達で新たな滞在先を探さないといけないというハプニングもありましたが、Uberとオート3輪車を駆使して現地のホテルを回ったのは良い思い出になりました。

インドが多様性の国である、ということは頭では知っていましたが、1か月過ごしてみると、本当に色々な人種、宗教、食事、文化、言語、貧富が混ざった国であることが体感でき、そういった壁を乗り越えるためにインドでIT投資とイノベーションが盛んであることも深く理解できました。最初は道を闊歩する牛や鳴り響くクラクションに驚いていましたが、不思議とすぐ慣れるもので、帰国の際には寂しささえ覚えるほどでした。

また、1か月の滞在中、平日は毎日オフィスに行ってプロジェクトを進めるのですが、夜や週末はフリーになります。平日夜はチームメンバーと様々なインド料理を堪能したりスポンサーと食事に行ったり、週末はデリー市内を観光で回ったり、デリーに同時期に滞在するもう1つのMAPチームと合同でタージマハルがあるアーグラに1泊ドライブ旅行をしたりと、プライベートも充実していました。同級生に話を聞くと、大抵のスポンサーは現地での観光を推奨していて、時には案内までしてくれているようで、アフリカの一部プロジェクトではサファリツアーに参加したそうです!

現地ローカルに混ざって一定期間生活することから見えてくることが必ずありますので、普通に生活していれば訪れない又は長期滞在しないような場所に挑戦してみるのがおすすめです。

 

② 海外企業・組織での実務

MAPが優れている点は、単に現地に滞在して観光するのみではなく、実際に現地の企業・組織で働く経験ができることです。

驚いたことは沢山あって書ききれないのですが、例えば、スケジュールよりも柔軟性が重視されており、ミーティングが時間通りに始まることは珍しく参加者を直接呼びに行かないといけなかったり(現地で2度プレゼンの機会があったのですが、どちらも開始が1時間以上後ろ倒しになりました)、一般的な業務開始が10時頃で、朝が遅い代わりに夜遅くや休日も仕事をしている人が多かったり、ということがありました。

コミュニケーションについても米国とはまた違う規範があり(スタートアップ的な組織であることも拍車を掛けたかもしれません)、質問に質問で返されたり、ミーティングが常に喧々諤々の議論でなかなか結論に至らなかったり、最初はうまくいかないことも多かったです。意思決定のプロセスはどうなっているのか、ミーティングの進め方をどう工夫してスポンサー側のキーパーソンと合意に至るか等、様々考える必要がありました。特に海外勤務が初めての米国人同級生は、普段は当たり前で意識していなかった部分を見つめ直す機会になったと話していました。

海外に長期滞在するだけであれば観光旅行でも可能ですが(当然長期休みを取るのは簡単ではないですが)、現地の企業・組織で働いてみることは容易ではないため、個人的にはこの機会提供がMAPの一番良い点だと思います。

 

③ チーム・プロジェクトマネジメント

私のチームは4人で、2人が米国(1人はインドにルーツあり)、残り2人が留学生(イスラエル人と私)という構成でした。チームマネジメントは毎年多くのプロジェクトが苦労する点だと事前に聞いていましたが、私のチームも実際に非常に苦労し、その分良い経験になりました。

MAPは他の講義のグループ課題等と異なり、①2か月間MAPのみに集中して行う、②オンサイトで長時間一緒に過ごす、③大半の学生が就活も一段落している、といった状況にあり、更に海外MAPでは不慣れな土地・環境で働くことでストレスを受けやすく、より深く長いチームワークが求められます。結果、普段のグループワークでは「しょうがないか」と流されたり諦められていたような点も詰めざるを得ず、自然と価値観や進め方の違いでギャップが表面化することが多くなります。チームのパフォーマンスを向上するために何ができるか、見解の相違が発生した際にどうコントロールするか、業務のコンフリクトを人間関係のコンフリクトとどう切り離すか等、Management & Organizationの講義で学んだことを実践するチャンスが沢山ありました。

プロジェクト管理の観点でも、初めてのチーム、環境、タスクという状況で前述した仕事文化やコミュニケションの壁等もあって進捗が芳しくない中で、期限内に成果物を形にする必要があり、柔軟かつ適切な舵取りが求められます。業務分担の明確化やチェックポイントの設定、スケジュールの共通認識の確認など、比較的業務経験が長い日本人学生にとっては、実務経験を活かしてチームに貢献しやすい領域ではないかと思います。

チームやプロジェクトマネジメントの経験は事前に期待していた以上で、海外プロジェクトという未知の環境での一番の課題であり、最も将来に活きる経験になったと感じています。

 

④ 学校のリソース

MAPはRossのActive Learningの目玉ということで、学校側も多大なリソースを割いています。代表的なものとしては以下があります。

Facultly Advisors: 各プロジェクトに教授が2人付き、週次で進捗共有してプロジェクトの方向性のアドバイスをもらうことができます。教授が各スポンサーとの橋渡し役も務めており、授業としてのプロジェクトの評価者にもなります。

Communication Coach: 成果物について丁寧かつ粒度の高いフィードバックをもらうことができます。具体的には、レポートの構成や体裁、表現、プレゼンテーションの見せ方や構成、話し方など、どうすればよりプロフェッショナルに見えるか、という観点で非常に有益なアドバイスばかりでした。

Librarian: 様々な情報ソースを有しており、探している資料や統計のテーマやトピックを伝えると、1-2日で公開されている記事やレポート等を収集してくれます。効果的に使えば、リサーチに掛かる時間を大幅に短縮することができます。

学校として、単純にプロジェクトを集めてきて生徒をランダムにアサインするのではなく、バランスの良いチーム構成にするための配慮、チームワークを高めるための試行錯誤の促進、プロジェクトの舵取りのサポート、成果物を仕上げるためのフォロー等、MAPを通じて学生の学びを最大化しようという強い意図が感じられました。

 

⑤ 留意すべき点

個人的には特段困った点はなかったのですが、留意点として唯一、プロジェクトの希望を出す年末年始の時点ではまだインターンが確定していない学生が多く、3-4月のタイミングで海外MAPに100%コミットできるか不透明感が残る、という点が挙げられます。MAP期間中もインタビューが続いていることを懸念し海外MAPを避けた、という同級生も一定数いました。この点はぜひ学校からの更なるサポートを期待したいところです。

 

以上、長くなってしまいましたが、少しでも皆様の参考になれば幸いです!

振り返ると、Rossの目玉として宣伝されるに相応しいプログラムで、想像していた以上に素晴らしい経験になりました。ぜひRossに入学された際には、海外MAPプロジェクトに挑戦してみてください!